「待ちなさい!龍成!」


社長室に麻友ちゃんの叫び声が虚しく響き渡る。

俺は足早に会社から出ると、路肩にちょうど停まっていた専用車に乗り込んだ。


「どうなさいましたか?」

「急で悪い、華乃の実家に行ってくれ」

「かしこまりました」


──苛立たしさと腹立たしさと情けなさ。


他にも色々な感情が入り混じり、何かに怒りをぶつけたくなっても、その行為すら恥ずかしいと思えて結局何も出来ない。


全ての原因は俺の浅はかさ。

今までの自分の行いが招いたこと。


それが何よりも許せなかった。


本当の自由は、責任の上にある。

責任もとれないやつが本当の自由など手にすることはできない。


生意気な口ばかり叩いて、俺はガキのまま自由をはき違えていた。


心のどこかではわかっていたのかもしれない。けれどそこには蓋をして、見て見ぬふりをしていた。自分にとって面倒だとしか思えなかったから。


生まれて初めて、俺は後悔という言葉の意味を知った。

そしてよりにもよってこんな時に、自分の気持ちにはっきりと気付かされた。



俺は華乃を愛してる。