…は、そういうことかよ。


やっぱ俺ら親子だわ。

やってることが同じだもんな。俺が華乃に突きつけた条件と一緒じゃねぇか。


以前の自分に嫌気がさす。


「桜庭は仕事は出来る。ただ向上心と統率力が少々足りず、流通部長止まりにしていただけだ。これから鍛えれば専務の仕事も形になっていくだろう」

「それなら普通に昇進させればいいじゃねぇか」

「ちょうどいいタイミングで桜庭莉乃が独り身になったんだ。使わない手があるか」


使わない手…。本当に自分の親であることに恥ずかしさすら覚える。

会社が大事なのはわかる。でもこんなやり方はどの方向から見ても、正しいとは言えねぇだろ。


「なにがちょうどいいタイミングだよ」


若干睨みながら親父を見つめると、親父はふっと息を吐いてソファーにもたれた。


「本来なら裏をつかって桜庭莉乃と婚約者を別れさせようとしたが、その必要がなく勝手に別れてくれた。こんなにタイミングが合うとは、想定外で助かった」


──!!!


「───っ!!」


俺は震え上がる拳でテーブルを叩きつけた。


「どこまで腐ってんだよ」