「次期社長としての自覚が芽生えたのかしら」

「何を呑気なことを…。もしそうならこうして悩む必要などない」

「あなたの取り越し苦労では？」

「麻友、いい加減にしろ。あの馬鹿息子を信用しすぎるな。今までどれだけ裏切られてきたか…。お前の甘さだ」

「…申し訳ありません…」

「千葉が調子に乗っている以上、あいつには次期社長として本格的に指導していかなければ。逃げ道のないように」

「でも華乃さんと結婚して真面目にやっているのですから、あの計画はなさらなくても」

「何を言っている。手のひらを返される前に実行するんだ。このままあいつが大人しくしているわけがないだろう」

「あなた…」

「お前だってわかっているだろう。あの女に社長夫人など務まるか」

「わたしもそうは思いましたが、本当に龍成は真面目にしているので、華乃さんのお力なのかと」

「ふざけるな。計画は変更しない。…しかし、こちらから手を打たなくても良さそうな情報が入った」

「…と言いますと？」

「少ししたら勝手にこちらの狙った展開に事が運びそうだ。そうなったらすぐに計画を始める。それまではくれぐれもあいつから目を離すな」

「…わかりました」