「そいつを専務にしたってことは相当信用してたんだろ?飼い犬に手を噛まれたな」

「それはお前も同じだろう。今まで何不自由なく育ててやったのに、会社にとって利益になるどころか悪疫そのものだ。いや、会社にとってだけじゃなく俺にとってもだ」


──悪疫か。この状況で継ぐ気はない、なんて言ったら殴られそうだな。


「そんなに俺が悪影響なら継がせなきゃいいだろ。俺が会社にいなきゃ問題ねぇんだから」

「もはやそのようなレベルではない。意地でもお前を次期社長にする。千葉になんぞ、会長から継いだ会社をやってたまるか」


うげ。なんでそこで無駄なやる気出すんだよ。

俺に継がせるよりはいくらかマシだと思うんですが。


「ついでにさ、千葉専務、横領してんの知ってるか?」

「──お前、どうしてそれを…!」

「女に貢いでたんだろ?その女、俺の知り合いだから」


目を丸くさせ少し間を置いたのち、親父は大きく息を吐く。


今気づいたけど、こんなに親父と話すのはもしかすると初めてかもしれない。記憶にないだけかもしれねぇが。