当初の理由を忘れるなんて、俺も相当詰まってんだな。一日一日が濃すぎるんだよ。

まともな休みがないからだ。本当の自分がかなり崩れてきてる。くそも面白くねぇ。


振り回されるのは御免だ。むしろどうして俺が馬鹿みたく振り回されてんだ。どう考えても俺が振り回す側だろ。

どんなことにも動揺なんてしちゃいけない。疲れとか言い訳にもならねぇ。

俺は何にも惑わされない。


──シャワーを終え寝室に入る。


いつものように華乃は背を向けて眠っている。いつものように、俺も華乃から少し離れて横になる。


「……」


本当に寝てんのか?……本当に眠れるのか?


起き上がり華乃の顔を覗いた。

マジで髪が濡れたまま寝てやがる。そんなに疲れてたのか?


─疲れもするだろうな。いくら結婚してようが、会って間もない赤の他人との共同生活。しかも愛なんて感情も何もない。

お互い仕事で一緒にいる時間は少ないけれど、疲れやストレスは溜まるだろ。


何の意図もなく華乃の頬を軽く撫でる。


今更悪いだなんて思ってない。思う資格もないだろう。

あと約五ヶ月頑張ってくれよ。俺が自由になったら、一つくらい言うことを聞いてやるから。


そんなことを考えているとまるで子供の寝顔を見ているような感覚になり、俺は華乃の頭にそっと優しくキスをした。