「…なんもしてねぇから気にすんな」

「嘘。そんなわけないでしょ。いくらなんでもわたしにだってわかるわ」

「別になんでもないって。気にしすぎ」

「そんな…」

「お待たせ致しました。前菜になります」


ウエイターがテーブルにお皿を置く。

それからコース料理が次々と運ばれ、それまでの会話は自然と流れていってしまった。


テレビや雑誌に出るだけあって、どれも言葉にならない程の美味しさ。一つも残すことなく、最後のデザートまでたいらげた。


「ほんっっとに美味しかった!来れて良かった!感謝するわ!」

「まだ残ってる」

「…え?」


デザートも終わったし、あとないでしょ。


「手、出して」

「手?」


美味しいものをお腹いっぱい食べて上機嫌のわたしは、そのまま素直に手を差し出す。


「──あ」


龍成がわたしの手のひらに乗せたものは、先ほど購入した指輪のケースだった。


「開けるよ?」

「どうぞ」


ケースを開け指輪を取り出した。


うん。やっぱり素敵。


まじまじと見つめていると、彫られた文字に驚く。


「……なんでわたしの指輪にあんたの名前が彫ってあるの」