「ほら、行くぞ」


龍成が歩き出す。


「大丈夫だったの?」

「当たり前。ただ、VIPルームじゃない席を頼んだからちょっと時間がかかった。あそこ窓が近いんだよ」


え……。


「それってわたしの為?」

「夜景が綺麗なんだけどな。ま、料理だけでも満喫できるだろ」


…ちゃんとわたしのこと考えてくれてるんだ。


席に着き龍成が注文していく。こういうところはさすがだなと思う。わたしじゃメニューを見たところでさっぱりわからない。ちゃんと大学卒業したのに…。

いくらホストっぽくても、一応社長の息子なんだもんね。慣れてて当然と言えば当然か。


少しすると、運ばれてきたワインがグラスに注がれる。乾杯し口に運んだ。


「わ、葡萄!ジュースみたい!」

「ガキ」

「うるさいな。…そういえばあの後どうなったの?」

「あの後?」

「うちから帰ったあと!その話ちゃんとしてよ」

「特になにも。親父も麻友ちゃんも仕事に行ったよ。ちゃんとした挨拶できなくて悪かったな」

「それは全然…。わたし、なにか失敗した?」

「失敗?」

「だって龍成の両親の態度が変わったのって、明らかに原因はわたしでしょ?わたし何かしたかな」