「来て早々申し訳ないが、急な仕事が入ったので今日は失礼する。結納などの話は後日ということで」


は?んな話聞いてねぇよ。どう考えても早過ぎだろ。


「そ、そうでしたか!お忙しい中ありがとうございました!」


華乃の親父が頭を下げると、親父と麻友ちゃんが立ち上がる。


それに合わせて桜庭家も全員立ち上がる。


とりあえず俺も立ち上がり、全員で玄関に向かう。


「それでは桜庭くん、会社でもよろしく頼む」  
「もちろんです!本当にありがとうございました!」

「華乃さん、龍成をよろしくお願いしますね」

「はい!こちらこそ!」

「慌ただしくてすまない。それでは失礼する」

「いいえ!ぜひまたお越し下さい!」

「失礼します」


本当に慌ただしく桜庭家を後にする。

待っていた車に全員乗るも、空気が重く会話がない。


何なんだ二人とも。あんまりだろ、その態度。


「龍成は家にいろ」

「──は?」


いきなりなんだ?


「マンションじゃなく家にいろ」

「なんでだよ。つーか仕事は?」