ここでまた流されたら同じことの繰り返し。本当に崇憲から離れられなくなる。

いけない、どうにかして逃げなきゃ。

それにいくら偽装結婚でも不倫なんて絶対イヤ。


キスをされそうになるのを、顔を背けて必死に遮る。


「崇憲、やめて…」


わたしの携帯の着信音が鳴る。


お構いなしに首筋にキスをする崇憲。


──だめ!!


「電話!!離して!!」


思いきり叫ぶと、崇憲は一瞬動きを止め、ようやく体を離した。

携帯を手に取り表示を見ると、電話はあいつからだった。


なんてタイミング…。


出る気分じゃなかったけど、この空気が耐え難く携帯を手に持ち外に出た。


「…はい」

『何してんだよ。出るの遅すぎ』

「…気づかなかった。何の用?」

『メッセージ見たか?』

「九時に迎えでしょ」

『見たなら返信しろよ。ちゃんと来いよ』

「わかってる」

『遅れるなよ』


良かった。この電話がなかったらまた繰り返すところだった。