「んなわけねぇだろ。お前が一番なんだから」

「…わたし今日は無理。いつもみたく出来ない」

「馬鹿だな。俺みたいな男に涙流す価値なんてねぇよ」


…いつもはこういうの、面倒くさそうにするのに今日は違う。

どうしたの?泣いてるってバレてるのに、呆れたりしない。

崇憲が自分を卑下した言い方をするなんて初めて聞いた。 


「──!」


それどころじゃない。このシチュエーションで崇憲が抱きしめてくるなんてありえない。まさか別人?!


嬉しいより疑ってしまう。


だって、こんなまともな恋愛っぽい行動、普段の崇憲からは想像つかない。


「た、崇憲、どうしたの?何かあった?」


驚きの余り、却ってわたしは少し冷静になれた。


「今日休みだろ?ずっといろよ」

「え、なんで?」

「夜、飲みだから店まで送って」

「それが目的?」

「あと煙草」

「…」


いつもの崇憲に戻った。なにこれ、作戦?

でも崇憲はわたしを抱きしめたまま。