「…なんで」


驚くわたしをよそに崇憲はドアを開ける。


「顔も出さずに帰るのかよ」

「と、取り込み中だったでしょ」

「ちょうど終わったとこだっただろ」

「そう?お邪魔かと思って」


平気なふりして声が震えてる。こんなんじゃ崇憲にバレバレだよ…。


「来いよ」


…本当は他の女の人が入った部屋になんて入りたくない。でも気にしてると思われるのもイヤ。


「……うん」


エンジンを止め崇憲の後を追いかけて部屋に入る。


「──っ」


入った瞬間、女物の香水の匂いが鼻につく。


「あの女、香水つけすぎ」


部屋を見渡すと、ほんの数日前に来たばかりなのに、わたしの存在はまるでなかった。


二人で眠ったベッドには、もう他の香りが染み付いている。