「未春、どうしたの?あ、もしかしてこの本、読んだ事あった?」


「あっ、えっと…うん。ごめん、実は読んだ事あって。せっかく持ってきてくれたのにごめんね…?」


香奈子は残念そうな顔をしていた。やっぱり傷付けちゃったかな…。


「なんだ、読んだ事あったかぁ~。でも、面白いよね、この本!主人公がさ━━━━━…」


本の感想を言う香奈子は笑顔で楽しそうだった。そんな香奈子を見て私も嬉しくなった。正直に言ってよかったと思う。


香奈子と話していると、あっという間にチャイムが鳴って先生が教室に入ってくる。そしてホームルームが終わると1時間目の授業が始まる。


今日は珍しく春優君も朝から教室にいた。たまにちらっと見ると目が合い、その度に胸が高鳴る。


先生の声とノートに書き写す筆記の音が聞こえる静かな教室で、1時間、2時間と午前授業が進んでいく。しかし逆にシャーペンを動かす私の手のスピードはだんだん遅くなっていく。