私は膝を抱えて縮こまる。
そんな私を包む様に優しい風が吹いた。
風は時に思いがけないことを運んでくる事がある。


俯いてる私の耳の近くで女の子の声が聞こえる。顔を上げると、見覚えのある女の子が顔をのぞき込んできた。


「あー!この前助けてくれたお姉ちゃんだっ!!」


「あ…。」


そうだ、事故の時に私が助けた女の子だ。
その時、後ろから男の人の声がした。


「おい、桃華。先に行ったら危ないだろー!」


桃華……?桃華って確か春優君の妹の名前。
それにこの声って……。


私は後ろを振り向く。そこには小さな男の子の手を繋いで歩いてくる君がいた。


「春優君っ…。」


「すんません、こいつ勝手に……」