その日の夕方、私はお母さんに付き添われて退院した。その帰り道、あの丘の近くの道を通った。
「お母さん、私、ちょっと行きたい所があるの。夕飯までには戻るから!」
「ちょっと、未春!あんまり無茶しちゃダメよー!」
私はお母さんの言葉より早く駆け出していた。
もしかしたら丘の桜の所に春優君が居るんじゃないかと思ったから。
けれど、春優君はいなかった。
一緒に見た空の色と夕日の色のグラデーションの景色は変わらないのに、君だけがそこに居ない。
でも、もしかしたら、これから出逢うのかもしれないし、諦めるのはまだ早いよね。
その後少しだけ待ってみたけど、春優君は現れなかった。