「…泣くなよ、ったく、めんどくさ。」
「ごめ……━━っ!?」
下を向いて泣いていると、突然ふわっと何かが覆い被さる。それは弥生君が着ていたグレーのパーカーだった。
「それ着てろ。夜はそんな格好じゃ寒いだろーが。」
「え…でも、それじゃ弥生君がっ…」
「俺は男だからいーんだよ。それより、お前一人で何してたんだよ?」
「それはっ……」
「…話したくないなら無理に聞かないけど。」
私はブランコに座って、両親のケンカや、それが嫌で出て来た事を弥生君に話した。
「そうか……でも、居るだけマシだろ。」
弥生君はブランコの柱に寄り掛かり小さな声で呟いた。これは夢と同じ言葉だ…。
弥生君の両親の事は話したくなさそうだから、あえて私は夢と同じように言葉を口にした。
「え…?」
「何でもない。」
「そっか…。」
夢では笑顔を向けたけど、もう一度同じ事を言われたくなくて、私は少し俯いて返事を返した。