ここで私、花弁を掌に乗せるんだよね。
とりあえず夢と同じにしてみよう。


私は花弁を掌に乗せると、夢通りに風に拐われた花弁は沢山の花弁と一緒に舞っていった。


夢で同じものを見た筈なのに、初めて見た時の様に感動した。それは色や空気が夢とは違ったから。


目に映ってきたものは、鮮やかで鮮明で、桜の匂いと緑の匂いが風によって、ふんわりと薫ってくる。


それは、夢よりもキラキラして見えた。



私は無意識に一度軽く瞬きをして弥生君の方を見る。そして一瞬にして目を奪われた。あまりにも弥生君の横顔が綺麗だったから。


さらさらと風で揺れる髪。前髪の隙間から見える長いまつ毛。真っ直ぐ前を見る綺麗な瞳。夕日に染まる頬。


全てが綺麗で、私は自然と呟いていた。


「━━━…きれい。」