あれ、なんだろう…凄く伝えたい。
今、私の目に映った弥生君の事。


「…風で弥生君の髪が揺れる度、前髪の間から見える目がすっごく綺麗だって思ったの。」


私の隣の弥生君は、ふいっと反対側を向くと、すっと立ち上がった。くるりと後ろを向き、一歩、また一歩と歩いて行ってしまう。


「え、もう行っちゃうの?」


「…またな。」


弥生君は一言そう言うと、立ち止まらずに行ってしまった。


私は“また”がある事に凄く嬉しくなった。それから弥生君の後ろ姿を笑顔で見送った。


弥生君の姿が見えなくなると同時に、目の前の景色も薄くなっていく。


淡く景色が混ざり合い、遠くで目覚まし時計のアラーム音が聞こえてくる。