「…悪ぃ、卯月。…親父、俺、真剣に話したい事がある。」
「…分かった。とりあえず皆座ってくれ。卯月さん…だったか?君もな。」
「はい…。」
和室のここには、長方形のテーブルが置かれていて、その周りに敷いてある座布団にその場にいた皆がそれぞれに座る。
私が春優君の隣に正座して座ると、突然手を握られた。もちろん握ってきたのは春優君。ちらっと見ると、少し緊張してるみたいだった。
私は大丈夫という意味を込めて、握られているのと反対の手を春優君の手の上に重ねた。春優君は一瞬だけ私を見ると頷いて前に向き直った。
「…で、話ってのはなんだ?」
「俺、卒業したら家を出る。」
「それは父さんの再婚が原因か?」
ちらっと恵子さんを見ると、複雑そうに顔を歪めた。
「いや、違う。…再婚に反対してるんじゃねぇんだ。親父もいい歳だし、桃華と椿には母親が必要だろ。だから、再婚には反対じゃねぇ。けど俺はその中に入るのは嫌なんだよ。」