フェンスの目の前まで行くと春優君は立ち止まった。私はその背中に話しかけた。
「春優君、話ってなに??」
「…今日、出稼ぎに出てる親父が家に帰って来るんだ。んで、卒業したら家出るって言おうと思う。」
「そうなんだ…。」
「…でも、多分反対されると思う。親父は新しい人…恵子さんを家族に向かえたいと思ってる…俺も含めた家族に。でも俺は嫌なんだ。」
恵子さんっていうのは、たぶん再婚相手の人。
春優君はきっと、お父さんの再婚の邪魔をしなくないんだ。それにお母さんを忘れたくないと思ってる。
笑った顔がそっくりで優しそうな雰囲気の春優君のお母さん。私は春優君のそばにいて欲しいと夢で頼まれた。
「たぶん親父とケンカになると思うんだ。お前の夢の事もあるし、お前に一緒に来て欲しい。卯月がいたらさ、なんかちゃんと話が出来そうな気がするんだよ。」
「…うん、分かった!」
「よかった。じゃあ、放課後よろしくな。」
「うんっ!」
屋上で私と春優君が約束を交わして教室に戻るとホームルームがちょうど始まった。