「健矢ってば、電車遅れちゃうよ。気を付けてね?いってらっしゃい!」
『仕方ないな…いってくる。お前も気を付けろよ?』
「大丈夫だよ。また後でね」
『また後でな』

なごおりしいのも山々だが、遅刻されては困るので、仕方なく電話を切った。
私の名前は、黒澤 彩音(くろさわ あやね)。
市立の学校に通う中学2年生。
電話の相手は、綾部 健矢(あやべ けんや)。
私の彼氏で、高校1年生。

私達は仲のいいラブラブカップルだ。
だが、ひとつだけ違うことがある。
普通恋愛は、同じ学校だったり、友達の紹介だったり、なにかしらで顔を合わせてから恋に落ちているだろう?
私達は…会ったことのないネットの人なのだ。

ふと、私は時計を見た。
すると…
「やばい、なんでこんなこと考えてるんだろ。そろそろ私も家出なきゃ遅刻する!」
時計はもう8時を指していた。
幸い私は学校が近いのでギリギリでも間に合うが、いつもより遅くなってしまい、急いで準備をする。

今は5月前半。玄関の時点で既に暑い。
いってきます、と呟いて、私は重たい玄関の扉を開いた。