「……勝手にしろ」


そう言って、お父さんはゆっくりと背中を向ける。

遠ざかっていく背中が、少しだけ寂しそうに見えたのは、私の願いかもしれない。

少しでも、私を手放したことを後悔してほしいって……。


「ふっ……うぅっ」


お父さんがいなくなって、急に緊張がとけたからか、私は堪えきれずに泣き崩れた。


「美羽、頑張ったね……」


そんな私を抱きとめてくれる棗くん。

雨が打ち付けて、身体が冷たくても、棗くんの温もりが私を慰めてくれていた。


「お父さんは……私がいなくなっても変わらないっ」

「美羽……」

「お母さんが死んで、その代わりが私だったらいいなんて言うんだよ?もう……私の居場所はっ、あの家には無いんだっ」


ボロボロと涙が溢れては雨に溶ける。

雨が降ってくれて良かった……。

この涙も、全て雨のせいにできるから。