「でも、その瞬間から無理やり攫うくらいには……俺、美羽のことを必要としてる」

「あっ……」


そっか、棗くんは私を必要としてくれてる。

私が離れようとしても、攫いたいと思うほどに。

それほどまでに私を必要としてくれてる……。

それが、私を励ますための言葉でも、こんなに嬉しいなんて……。


「……私……」


だから、せめて今だけはこの温もりに勇気をもらおう。

私は……自分で望んで、棗くんの傍にいるんだから。



「家には帰らない……私を、必要としてくれる人の傍にいたい。だからお父さん……ごめんなさい」


頭を下げれば、お父さんは驚いたような、傷ついたような顔で私を見つめる。


どうして……お父さんの方がそんな顔をするの?

家族なのに、お父さんの考えてることが分からない。