「私はっ……お父さんの娘なんかじゃない!!お父さんの所にも帰らないっ!!」

「お前……自分が何を言ってるのか、わかってるのか!?」


そう言ってお父さんは私に近づくと、拳を振り上げた。


ぶたれるっ!!

そう思って目を閉じたのに、痛みはいっこうにやって来ない。

ゆっくりと目を開ければ、そこには、お父さんの腕を掴む棗くんの姿があった。


「……美羽さんは、お父さんの道具ですか」


私を庇うように立つ棗くんの顔は、私からは見えない。

だけど……震える声に、聞いたことのないような低い声。

すごく、怒っているのが分かった。


「よそ者が、首突っ込むな!!」

「美羽さんのことを大切に思っているだけでは、首を突っ込んじゃいけませんか?必要無いと言ったのは、お父さんでしょう?」


それは、私が棗くんに出会った日に話したことだ。

それを覚えていてくれたんだね……棗くん……。