「棗くん、入浴剤を買って帰ってもいいですか?」
「入浴剤??」
「はい!棗くんの好きな香りの入浴剤を買いましょ!」
意気込めば、棗くんはまるで大切なものを見るかのように私を見つめる。
「俺のために……嬉しいな。でもね、俺にとって一番心安らげるのは……美羽といる時だよ」
「えっ……わ、私は何も……」
「美羽は分かってないなぁ……。俺が、どれだけ美羽の存在に救われてるのか」
顔をのぞき込まれて、頬に熱が集まる。
棗くんは、無意識なのかもしれないけど……。
棗くんの言葉に、毎回あたふたして、私は変になるんだよ。
だから、あんまりドキドキさせないで欲しい。
そんなことを考えていると……。
「お前……こんな所で何してるんだ」
不意に聞こえた声に、足を止める。
そんな私に気づいてか、棗くんも一緒に立ち止まった。