『ありがとう、美羽。それじゃあ、美羽に甘えてもいいかな?』
「あ、もちろんです!」
『それじゃあ、駅前に来てくれる?』
駅前……。
棗くん、電車でどこかに行ってたのかな?
「はい!すぐに行きます!」
『ぷっ、ゆっくりでいいよ、気をつけてね』
そう言って笑った棗くんの声に、電話が途切れる。
その瞬間から、私は嵐のようにバタバタと準備をして、家を飛び出した。
***
――ザァァァッ。
傘に大粒の雨がぶつかる中、私は駅前へとやってきた。
ちょうど電車が到着したのか、どっと改札から人がたくさん出てくる。
「棗くん、どこだろう……」
キョロキョロと人混みの中に棗くんの姿を探す。
すると、人混みの中に頭一つ分飛び出た棗くんの姿を発見した。
「棗くんー!!」
ブンブンと手を振れば、棗くんがハッとしたようにこっちを見る。
棗くんは笑顔を浮かべると、そのまま私のさしている傘の中へと駆け込んだ。