「えと……棗くん、用事は終わりました?」

『うん、ちょうど今終わったところだよ。あ、雨だ……』


棗くんは外にいるみたいだった。

やっぱり、雨降ってきちゃったんだ……。


「棗くん、迎えに行ってもいいですか?傘、持っていきます!」

『え?でも、面倒じゃない?あとは帰るだけだし、これくらいなら大丈……』

「だめですよ!」


棗くん、こんな時まで私の心配をするんだから……。

もう少し、頼ってくれてもいいのに。


「あ、あの、酸性雨は禿げるらしいですし!」


私は必死に棗くんを説得する。


『…………ぶっ!!』


すると、数秒の沈黙の後、すぐに吹き出された。


「な、棗くん……もしかしなくても、笑ってます?」

『ハハッ、まさかこの歳で禿げる心配されるとは……ぶっくく、思ってなくって……くくっ』

「もう……本気で心配してるんですよ……?」


笑っている棗くんに、なんだか私まで笑いがこみ上げる。

でも、棗くんが笑ってくれてよかった。

少し、元気が無いような気がしたから……。