「棗くん、まだ寝ぼけてますか?」


寝ぼけてて、私を抱きしめたのだとしたら……悲しかったから。


「うん?もう、すっかり目が覚めてるよ?」

「そ、そうですか……」

「美羽、いつも朝ごはんありがとう」


棗くんはそう言って笑うと、洗面所へと消えていく。

あぁ……あの笑顔は反則だ。

棗くんは、カッコイイ。

それも、見た目だけでなく心も……。

みんなが追いかけたくなる気持ちがやっと分かった。


「私の心臓が止まりませんように……」


どっと疲労感に襲われながら、私はテーブルに朝食を運ぶのだった。


***


「美羽、今日は少しだけ出掛けてきてもいいかな?」


トマトスープに口をつけると、おもむろに棗くんが箸を置いて、確認をとってくる。


そういえば、棗くんは私を置いてどこかへ出かけることなんて無かったな。


友達だっているだろうし、私だけが棗くんを独占するわけにはいかないよね……。