「棗くんは……不思議な人ですね」
「え、そうかな?」
「だって、会ったばかりの私に、こんなに優しくしてくれる……」
お人好しも、度が過ぎてるっていうか……。
優しすぎるのか、それとも他に理由があるのか……分からない。
だからかな、棗くんのことをもっと知りたいと思う。
「それは……」
そこまで言いかけて、棗くんは意味深に私を見つめた。
私の鼓動まで伝わりそうなほど、近い距離で棗くんと見つめ合った。
「美羽が、思い出したら教えてあげる」
「え??」
「ほら……おやすみ、俺の可愛い天使」
その話はここまでと言わんばかりに、棗くんは目を閉じてしまう。
思い出したらって……。
私、棗くんのことで忘れてることがある……?
気になりながらも、棗くんの手に頭を撫でられているうちに、眠気に襲われる。
私はやってきた眠気に逆らえず、重くなる瞼を閉じてしまったのだった。