「好きだ……好きだよ、美羽……っ」


棗くんは、泣いていた。

震える唇は、どちらのものなのか分からない。


「棗くんっ……ふっ…うっ……」


だって、私も同じように、泣いていたから。

きっと、この人がいなくなったら生きていけない。

廃人みたいになって、壊れてしまう。

それなら……私の心も魂も一緒に棗くんに奪ってほしい。


「好き……棗くんっ」

「うん……っ、嬉しい、美羽……っ」


壊れてもいいから、全て奪い去って。

悲しいと感じることがないように、この世界に……置いていかないで、私も連れてって……。


そんな儚い願いを込めて、今度は自分から棗くんに口付けたのだった。