「ふぅ……俺、つくづく感じるな。美羽の笑った顔が、俺を元気にしてくれる」
「……棗くん……」
棗くんが、私の頬をスルリと撫でて微笑んだ。
それは、宝物に触れるかのように優しい。
「人を好きになるって、すごい事なんだね。それだけで、力が湧いてくるんだもんなぁ」
眩しいものを見るかのように細められる目に、トクンッと心臓が鳴った。
「っ……そっか、私……役に立てて嬉しい。棗くんのために何かしたくても、ありきたりなことしか浮かばなくて……」
棗くんの好きなご飯を作るとか、そういう単純なことしか浮かばない自分に落ち込んだりしてた。
だけど、傍にいるだけでも力になれてたことが嬉しい。
「馬鹿だなぁ、美羽は。俺がどれだけ美羽を好きか分かってない」
「えっ……?」
「美羽の存在が、俺とってはかけがえのない宝物で、それ以外なんて望んでないんだよ」
前髪を掻き上げられて、額にキスをされる。
それに真っ赤になっていると、棗くんにクスリと笑われた。