こんなにも、強い気持ちになれたのは……。

今、目の前の愛おしいこの人に、恋をしたからなんだろう。

こんなに真っ直ぐに、誰かを想うことが、私に底なしの勇気をくれること……初めて知ったんだ。


「っ……美羽を傷つけてしまうのかもしれない……」

「はい……」

「美羽を泣かせてしまうのかもしれない……でも、美羽の傍に……傍に、いたい……」


静かに、棗くん瞳から涙が零れる。

棗くんが泣いたところを、初めて見た。

夕日に照らされて、オレンジ色の光を反射させてる。

それが美しく、余計に切なくさせた。


「美羽のこと……初めて出会った日から……ずっと好きだった……。きみのために、生きたいって……思うほどにっ」

「っ……棗くんっ!!」


私は、堪らず棗くんに抱きついた。

そんな私の背中に、恐る恐る棗くんの腕が回る。