「この胸にある想いが、美羽を苦しめるのだけは、嫌なんだ……」
「っ……」
「だからせめて、この命がある限り、きみのために何かをしたいと思う」
棗くんは残された時間で、私を幸せにしようとした。
なら私は……?
私は、棗くんのために、何を覚悟した?
「ただ美羽が……俺が傍にいることで辛いのなら……」
離れてもいいって、言うつもりなんだ。
家族と離れた時と同じように……。
棗くんは、自分よりも他人を優先させてしまう……優しすぎる人だから。
そんなことを考えているうちに、戸惑っている気待ちが落ち着いてくるのを感じた。
「私……」
そうだ、私の中にあるのは……揺るぎない棗くんへの想い。
もし明日、この命が尽きたら……。
いつか、棗くんが言っていた言葉だ。
くだらないプライドや意地、体裁とは少し違うけど……。
「私は……」
この悩んでいる時間、着々と棗くんの命の期限はやって来てしまう。
それなら、私は……この恋を、貫きたい。