「まずいな……この空だと、ひと雨くるかもしれねー」


その昴の言葉通り、やがて雨が降り出した。


夏とはいっても冷たい雨は、少しずつ私の体温を奪っていく。


「寒い……」


「大丈夫か? 今、上着をかけて――」


そこで昴は、それが無理であることに気付いたみたいだった。


「くそ……! 俺じゃあ、温めることもできねぇのかよ……!」


くやしげに水面を叩く。


だけどその拳すらも、ただ水をすり抜けるだけだった。


「大丈夫だよ、きっとすぐに助けが来てくれるって」


「……っ」


「紗英たちが、探してくれてると思うから……」


そうは言うものの、降り続く雨は次第にその勢いを強くして、辺りを白いカーテンで覆い始める。


だんだんと、意識がぼんやりとしてきた。



このままじゃ、まずいかもしれない。