「そっか、分かんないのか」


「うん、ごめん……」


「いいって」


昴は静かに首を振る。


「だけど俺、何で大晴山なんかに行ったんだ?」


「そんなの、私が知りたいよ」


そんなところに行かなければ、昴は死ななくてすんだのに。


「それに、あれから一年が経ってるんだろ?」


「うん」


「そんなに俺、何してたんだ? 寝てたのか?」


「授業中みたいに?」


「はは、佐々木の数学の授業じゃあるまいし」


そう言って、昴は笑った。


その笑顔は、私の記憶にあるものと、ぜんぜん変わりがなくて、少しだけ涙が出そうになる。