「あ、そうだ。これ、昴に買ってきたんだよ」


「ん?」


「リストバンド。買い物してる途中で見かけて、昴に似合うかなって」


「おっ、サンキュ……って、これ、どうやってつけるんだ?」


「え、あ」


そうだった。


昴は、物に触れることはできない。


物だけじゃなくて、人も、それ以外にも。


今日だって、それのせいで何て言っていいか分からないもやもやとした思いをしたっていうのに。


すると私のそんな心中を察してくれたのか、ことさら明るい調子で昴は笑った。


「だったらさ、なんか仏壇とかにお供えするといいんじゃね? 前にテレビでそんなことをやってた気がする。お炊き上げ、っていうのか?」


「え、うちに仏壇なんてないよ」


「だったらお寺で供養するとか? 神主に拝んでもらえばいいんじゃないか?」


「神主さんは神社だよ。それに近くにお寺とかないし。教会ならあるけど」


「う、そうなのか……」


困ったように眉尻を下げる昴。


気を遣ってくれているのが分かった。


本当は、そうしなきゃいけないのは、私の方なのに。


「んじゃさ、俺のかわりに梨沙がつけといてくれよ、これ」


「それじゃあプレゼントの意味なくない?」


「いいんだって。こういうのは気持ちの問題だから」


「うーん」


結局、リストバンドは、昴の言う通り私がつけておくことにした。