「ほんと、キザだよ……」


手紙を読みながら、私は涙を流していた。


普段の昴からは想像もできない、甘くて面映ゆい言葉。


昴の口から聞きたかった。


恥ずかしそうに顔を赤くしながら、それでもその言葉を言ってくれる昴の姿を、この目で見たかった。


でも、それはもう叶わない。


心なしか、〝すばる〟の光が鮮やかになったような気がした。


「昴が、なぐさめてくれてるのかな……」


昴の最期の言葉が頭をよぎる。




『お前が涙を流す度に、光になって降り注いでやる』




だとしたら、私の周りを、この屋上を包むこの蒼い空気は、昴そのものだ。


私はもう、死のうとは思わない。


だって昴はいつだって傍にいるから。


星になって、光になって、私のことを見守ってくれているから。


「昴……」


忘れないよ。


何があっても、どれだけ時間が経っても、私は絶対に昴のことを忘れない。


空に〝すばる〟が輝く限り。


その横で、『Dearest』がそっと寄り添う限り。


昴はずっと、私の心の中で生き続ける。




「昴、大好きだよ」




そっと口に出してそうつぶやく。


柔らかく響いたその言葉は、蒼い光に包まれて、ふわりと屋上一帯に拡散した。


                                     end