大晴山の〝星見台〟


その場所の噂を聞いたのは、だいぶ前のことだ。


この辺りではどこよりも星がきれいに見えると評判で、タイミングさえ合えば、夏の間でも〝すばる〟が見えるという場所。


ずっと行ってみたいと思っていたけれど、電車で一時間という距離が壁となって、なかなかチャンスがなかったのだった。


でもある転機がやってきた。


夏休みのあの日。


屋上にやって来た梨沙。


いつもとは違う暗く沈んだ表情を怪訝に思い訊いてみたところ、彼女の両親が離婚するのが決まったのだという。


梨沙のあんな表情を、俺は初めて見た。


声を上げて泣く姿を……初めて見た。


元気づけたいと思った。


笑顔にしたいと思った。


そのために、俺にできることは何だろう。


来週は、梨沙の誕生日だ。


その特別な日に、二人で〝星見台〟から星を見ることができたら……梨沙を励ますことができるんじゃないか。


そしてそこで……俺の気持ちも、梨沙に伝えよう。




それはひどくいいアイデアのように思えた。


それだけじゃない。


かねてから、梨沙の誕生日にはプレゼントしたいと考えていたものがあった。


そうだ、そのためにはあの場所はきっとぴったりだ。


首もとに光るチョーカーを手で触れながら思う。


俺は二人で大晴山に行こうと決めた。


その下見も兼ねて、一度一人で行ってみることにしたんだ。