「『夏の願い星』、ほんとだったんだ……」


この時期は見えないはずの、六つの星を見上げながらそうつぶやく。


「ああ。だから俺は願ったんだ。どうか、梨沙に触れさせてください。梨沙を、助けさせてくださいって」


「昴……」


「今度は……ちゃんと、つかめた。ちゃんと、助けられた」


何かを確かめるかのようにそう自分の手を見る。


その顔には、どこか何かをやり遂げたような色が漂っていた。


「にしても相変わらずドジだな。まさかあんな分かりやすく道が途切れてるところから落ちそうになるなんて」


「う、それは……」


「まあ、俺も人のことは言えないんだけどな……」


少しだけ遠い目をしながらそうつぶやく。


「でも昴、どうして急にいなくなったりしたの?」


「それは……」


「探したんだよ? 何でこんなところに……」


「……」


私のその言葉に、昴はしばらくの間、黙りこんでいた。


青白い星の光に包まれて、まるで御伽噺の一ページみたいになった世界に、静寂が舞い降りる。


僅かな風の音と、気の早い虫の音だけが、ささやかに鳴り響くだけだった。


やがて、昴はゆっくりと口を開いた。


「……全部、思い出したんだ」


「え?」


「一年前……どうして俺はここに来たのか。何をしたかったのか。どうして死んだのか。全部……」


「それって……」


「ああ」


昴がうなずく。


そして私の顔を真っ直ぐに見つめて、こう言った。






「話すよ、あの日のことを……」