教室内がざわりとなった。


みんな、犯人を見る目であたしのことを見つめる。


これは岸野さんから借りたものです、といちおう言いはしたものの、だれもそれを信じていないのは明らかだ。


あー、もう、めんどくさい。


こうなったら、泣きながら頭を下げて、犯人だって言えばいいんでしょ。


本当のことを言ったって、だれも信じやしない。


だったら適当にやりすごして、ダメージが最小限にすむようにうまくやるだけだ。


そう思った。



だけど。



「ちがいます」


一人だけ、そうじゃないって言ってくれる子がいた。


「紗英ちゃんは……このシャーペン、岸野さんから借りたって言ってました。とってなんかいません」


梨沙だった。


先生の目を真っ直ぐに見て、いつものどちらかといえば優しい口調とは違う、きっぱりとした口調でそう言う。


「は? 犯人の言うことを信じんの?」


「犯人じゃないよ……!」


「はぁ?」


「紗英ちゃんは、絶対に人のものをとったりなんかしない。紗英ちゃんが借りたって言うんなら、きっとそうなんだよ。私は……紗英ちゃんを信じる」


梨沙は最後までそう言ってゆずらなかった。


咲子が、すごい目をして梨沙のことをにらんでいた。




結局、二人して職員室に呼ばれることになった。


先生は「あなたの勘違いじゃないの?」とか「藤井さんのことをかばってるの?」とか言っていたけど、梨沙は頑として首を縦にふらなかった。