梨沙と初めて出会ったのは、小学生の時だった。


四年から五年に上がって、クラス替えが行われた時のことだった。


「そのペンケース……」


「え?」


「それ……あたしのと、同じやつだね」


たまたま隣になった時に、そう話しかけたのが始まりだった。


特に友だちになろうと思って言ったわけじゃない。


ただ何となくそんな気分だったから声をかけただけだ。


でもそのあたしの適当な声かけに、梨沙はお日様みたいな笑顔で答えた。


「あ、ほんとだ。どこで買ったの?」


「ん、駅前のハンズでだよ」


「あ、私もそこでだよ。あそこ、かわいい文房具がたくさんあるよね。ドーナツシールスタンプとか」


「あ、それ、あたしも気になってたやつ」


「だよね、かわいいよね」


なんか楽しいな、って思った。


この子の表情には裏表がない。


だから話していて肩の力がぬけるっていうか、余計な裏の感情を読もうとする必要がなかった。


「ね、よかったら、友だちになってくれない、かな?」


「あたし?」


「うん」


だからそう言われた時、あたしは迷うことなくこう答えていた。


「ん、いいよ。あたしは藤井紗英。よろしくね」


「私は仁科梨沙。よろしくね、紗英ちゃん」