だからあの夏祭りの日、わざと二人をはぐれるように仕向けた。


自分の心の内にある、僅かな綻びに気付かぬようにして、そう企てた。


結果として、それはうまくいった。


僕は藤井と結託して二人から離れ、昴と彼女は二人きりになることができた。


だけどどうしてだろう。


手を繋いで人混みの中へと消えていく二人の姿を見た時、胸の奥が少しだけズキリと痛んだ。


彼女の日だまりのような表情が浮かんだ。


でも僕はそれを、見て見ぬふりをした。


自分の中にあるこの感情が何であるのか、この時にはもうあらかた想像はできていたけれど、あえてそれから目を逸らした。


そうしないと……いけないと思ったから。


そのあと、しばらくしてから昴たちと合流した。


二人だけでいる間に、何があったのかは分からない。


だけど合流した時に、彼女は少しだけ赤い目をしていたから、もしかしたら秘めていたものを打ち明けたのかもしれない、とそう思った。