皆で花火をやった時のことは、今でも覚えている。


昴といっしょに線香花火をやっていた時に、ふいに何かが飛びついてきた。


何だろう? と思った瞬間、頭の横をロケット花火が通り過ぎていった。


本当に、当たるかどうかのスレスレのところだった。


助けてくれたんだと、すぐに分かった。


「……仁科!」


「だ、だいじょうぶ……かすっただけで、当たってないから」


どうやら彼女に花火は当たっていないみたいだった。


ただ、僕の身体を押した拍子に転んでしまい、彼女のヒザにすり傷ができていた。


「あ、だ、だいじょうぶだよ。ちょっとすりむいただけだから」


「……っ」


……どうしてだろう。


……無性に腹が立った。


別にロケット花火を当てられそうになったことに対してじゃない。


そんなことは男同士でつるんでいればよくあることだし、いちいち気にしていたらキリがない。


そうじゃない。


僕が憤っていたのはそれじゃなくて。


それが原因で、目の前の彼女が怪我をしたことだった。


「……気を付けてよ」


気が付いたら、強い声が出ていた。


「あ、え、えーと、ごめんな。つい手元が狂って……」


「……ロケット花火、人に向けちゃいけないって、知ってるよね?」


「ほ、ほんと悪い。もうやんないから。あ、あはは……」


顔の前で両手を合わせて、男子は逃げるように離れていった。


僕は彼女の方に向き直る。


「……本当に、大丈夫?」


「う、うん、平気」


「……そっか。それならよかった」


心の底からほっとした。


そして仁科の顔を見て、


自分でも驚くくらい、素直にこう口にしていた。




「……ありがとう、仁科」