「……かんない……」


「梨沙?」


「……そんなこと、分かんないよ……!」


気が付いたら、私は両親に背を向けて走り出していた。


何もかもが分からなくなって、家を飛び出していた。


お父さんとお母さんが、離婚する……


それは、もしかしたらそうなるのかもしれないって、心のどこかでは感じてた。


そう遠くない未来にそうなるんじゃないかって、覚悟はしていた。


でも、何もこんな時じゃなくたっていいのに……!


だって、来週、私の誕生日なんだよ……?


去年は、家族みんなでお祝いしてくれた、忘れられない日なんだよ?


だけどお父さんもお母さんも、お姉ちゃんも、今はだれもそんなことには気付いてくれない。


みんな自分のことばかりで、バラバラな方を向いてしまっている。


それは、離婚は仕方のないことだと思う。


お父さんとお母さんがそう決めたのなら、完全に納得はできなくとても、認めなければならないと思う。


でも、それでも……誕生日だけは、もしかしたら去年と同じように家族みんなが同じ方を向いてくれるんじゃないかって、心のどこかで淡い期待を持っていた。


特別、どこに向かおうとしていたわけじゃない。


でも気付いたら、私はそこにいた。




いつもの、星の光が優しく降り注ぐ、屋上に。