「……なんつーか、少しだけ苦手なんだよ」


昴が言った。


「え……?」


「こういう集まりがあったあとの撤収する時の空気っていうの? もちろん、賑やかなのは好きだ。だけどなんつーかな、盛りあがったあとの全部終わっちゃいました、みたいな雰囲気が少し苦手っつーか。静まり返った家に帰るのが、慣れないんだよな」


その気持ちは少し分かる気がした。


祭りのあとの静けさ。


その時間が楽しければ楽しいほど、何だかそのあとにぽっかりと何かが足りないような気がするというか。


「じゃ、じゃあ、私、電話する」


「え?」


「昴が寂しくないように、家に帰ったらすぐ電話するよ。それで、寝るまでずっと話してる。そうすれば……寂しくない、よね……?」


と、そこまで言って、気付いた。


「え……あ、な、何言ってるんだろ! ご、ごめん、変なこと言って……」


「いや……」


そう言って昴が笑う。


「梨沙って、ほんと面白いのな」


「お、面白い?」


「ああ。予想もしなかったことを言ってくる」


そ、そうなのかな?


自分ではよく分からないけど……


「……ありがと、な」


「え?」


「俺のこと、心配してくれたんだろ? 感謝してる」


少しだけ照れくさそうに笑う。


そして、こう言った。


「電話、待ってるな」


「……うんっ!」