「……っ」


「……仁科!」


「だ、だいじょうぶ……かすっただけで、当たってないから」


体当たりした時に転んだ勢いで、ちょっとヒザをすりむいたくらいで、こんなのかすり傷くらいだ。


「……そっか、よかった」


涼くんがほうっと息を吐く。


そして、ロケット花火を打った男子の方を振り返る。


「……気を付けてよ」


涼くんのその声は、今まで聞いたことがないくらい強いものだった。


え、もしかして、怒ってる……?


「……危ねぇだろうが」


え、す、昴も……?


「あ、え、えーと、ごめんな。つい手元が狂って……」


「……ロケット花火、人に向けちゃいけないって、知ってるよね?」


「……同じこと、やってやろうか? 十本くらい使って」


「ほ、ほんと悪い。もうやんないから。あ、あはは……」


両手を顔の前で合わせて、男子は逃げるように離れていった。


「……本当に、大丈夫?」


「他に怪我してないよな?」


「う、うん、平気」


そう言うと二人とも納得してくれたみたいだった。


ふう、よかった。


私なんかのために二人が怒ったまんまだと、申し訳ないもんね。


胸をなで下ろしていると、涼くんがふと振り返った。


「……そうだ、忘れてた」


「?」


私の顔を見ると、


にっこりと笑って、こう言ったのだった。




「……ありがとう、仁科」