目の前に立っている男は、呆れ顔で私を見下ろすだけ。
スウェットだし、彼も今起きたんだろう。
「おはよう、アキ」
彼の名前を呼べば、はぁ、とため息をつかれた。
「お前呑気すぎ。俺今日仕事なんだぞ?」
「私は休みだもん」
「だろうな」
分かっていたとでも言うように答えるアキ。
アキこと、笠野秋哉 (カサノ シュウヤ)。
秋哉って字が "秋" だから、私はアキって呼んでる。
ちなみに私もアキも24歳の同い年だ。
「アキ、ご飯」
「あほ。単語だけで言うな。俺はご飯じゃない」
お腹が空いてるから何かを作って欲しいという意味で言ったのに、何故かあほ呼ばわり。
まぁ、それは冗談でアキもちゃんと意味はわかってくれてると思うけど。