「…なんで今更」
「え?凛華何か言った?」
「あ、いや…なんでもない」
楓に首を傾げられたけど、言えるわけがなかった。
今目の前にある新営業課長が、今の私を作った張本人だなんて。
彼を「悠人君」だなんて呼んでいた頃が怖いくらいに懐かしい。
容姿はそのまんまだけど、雰囲気はあの頃と比べて大分大人っぽくなったと思う。
「…え、凛華?ちょ…っ、」
黙って立ち上がった私に、楓が驚いたように名前を呼んだ。
けどそんなことは気にも止めず、私は受付を離れて女性社員に囲まれた彼の目の前に立った。
「お久しぶりです。濱田課長」
震えそうになる声を必死で抑えて、そうハッキリと言い放つ。