「きゃーっ、濱田課長!お疲れ様ですっ!」


女性社員の甲高い声によって、楓の口が止められた。





─────ハマダ?


そしてその声を聞いた瞬間に、私の視線はその人物へ向く。




「……嘘でしょ…」


その濱田と呼ばれた男を見て、私は目を丸くした。



キリッと整った目に、薄い唇。その黒い髪は、無造作ではあるが似合いすぎるくらいに上手くセットされている。




「あ、凛華。あの人だよ、ほら」


そんな私の横で呑気にその人物を指差す楓の声を何となく聞いていた。




私の目に映るものが見間違えでないのであれば。




「あれがさっき話してた新営業課長」




おそらく、彼は。




「濱田悠人(ハマダユウト)さん」





────あぁ、やっぱり。



私を捨てた、かつての恋人だ。