道に面した大きな窓からは日がどっぷりと暮れていた。
「暗いぜ…。」
「暗いな…。」
「何しゃべったか覚えてない。」
「同じく。」
「こんなにしゃべったのは初めてでしょ。チミ。」
「確かに初めてだ。」
光はそう言いつつも本当に驚いていた。
「楽しかった?」
「疲れたね…。」
「素直じゃないね。お互い…。」
「君は素直でしょ。ベラベラしゃべるし…。」
「チミもわかってないねー。同じ地球外生命体にあえてうれしいのよ!」
「はいはい。じゃあ帰りますか…。」
光が席を立とうとした時、咲が慌てて叫んだ。
「えっ。まだいいじゃん。7時だよ!健全な青少年ならあと5時間はOK!」
「いや…、深夜徘徊トカ補導だからね…」
「それでも、あと一時間。いや三十分は?同じ地球外生命体同士もっとさー。」
「だめだよ。さすがに暗くなるまで女の子を連れ回すのは…」
光が真剣なまなざしをみせた。
「そうね。だよね。」
咲の顔が一瞬のうちに曇った。
咲は無言のままに立ち上がるとそのままレジに向かった。
「君が払う必要なんかないのに…。」
咲は店員に福沢さんを渡した。
「オゴリ!」
光はなにか暗黙のルールを破ったような後悔に襲われた。
そんな心を読んでか咲は付け加えた。
「チミは素直におごられておけばいいわ。今度はガッツリおごってもらうから心配なんかしないで…」
咲はさっきとは打って変わったさみしそうな笑顔を光に向けた。