人間を恨んでいる過去の記憶を取り戻した尊が。
そんな人間に化けて暮らしていた事実に、傷つかないわけがない。
大嫌いな人間に化けるのがどれほどの屈辱なのかわからないけれど。
ただ漠然と人間が嫌いだと思っていた以前の尊の感覚とは完全に違う。
だって、理由を思い出したのだから。
人間にされたことも、起きたことも。
それがきっと、尊にとって許せないことだったのなら尚更。
そんな人間の中で暮らそうとしていた自分を深く後悔することだろう。
そして・・・。
大嫌いな人間・・・である私に、助けられた事実を、尊は許せないかもしれない。
「亜子?どうしたの?」
「え・・・」
「泣いて・・・」
「ご、ごめ・・・なんでも・・・」
どうしよう。
私、尊の心を壊してしまうかも。
私のお節介が人に迷惑をかけることわかってたはずなのに。
いつだって空回りするお節介が、今回はうまくいくなんてことありはしなかったんだ。
「大丈夫じゃないよ。ちょ、ちょっと座って。なにか飲むもの取ってくるから」
「ふ・・・、うぅ・・・」
そう思えば思うほど、涙は止まってくれなかった。